「学」という字は普段よく使いますね。「学習する、学ぶ」という意味だと誰もが知っていますが、もともとは「家を建てるという意味でした。」
繁体字は「學」と書き、複雑ですが、上の部分は両手を表しているのです。
まるでハートを両手で包み込んでいるような温かい字なのです。
ボクはこの字を見つめ、ノートの上で格闘してみました。
たった一文字ですが、30分でノートのページは埋まりました。
そのノートも公開しています。
また動画でもノートでの格闘の様子や、ノートに書かなかったことなどを話しています。
ぜひ合わせてご覧くださいませ。
ぜひ、この素敵な字の本当の姿を見ていきましょう。
漢字の概要と基本情報
- 繁体字:學(もともとは「斆」)
- 簡体字:学
- 日本の漢字:学
- ピンイン:xué
- 部首:子
- 画数:16画
漢字「學」の成り立ちと字源の深掘り
もともとは「斆:xiào」という字でした。
「自覚する、目覚める、自分の不足に気づく」という意味です。
秦の時代に文字も統一され「學」が公式書体(篆文)とされました。

下の部分が家を表します。
その上の「×」のような形は木材で、その左右にあるのは手です。
家の屋根に両手で木材を置く様子を表しているわけです。
後に下の家の部分に「子」がつくようになりました。

「學」は「家を造る」もしくは「家を解体する」という意味でした。
「學」の意味と用法の発展過程
「家を造る」という意味は消滅し、「学習する」という意味が派生しました。
「学習する」からの派生は以下の通り。
①「学問、学識」→「学派、学説」
②「学校」
③「真似する」
④「述べる、話す」

単語推測の鍵:「學」を含む熟語を構成要素から解き明かす
「家を造る」という意味は消滅し、「学習する」という意味が派生したので、
「学習する」という根底の意味から推測していきましょう。
「学霸」「学舌」「学步」「学坏」
霸
「霸:bà」はもともと「(旧暦で)毎月始めにみられる月」のことでした。
ここから「諸侯のリーダー、中心人物、覇主」を指すようになりました。
「学」+「霸」→「学霸:xué bà」(学問の世界での中心的人物)
学生たちの間では、ネット用語で「成績がいい人」を「学霸」と呼ぶようになりました。
「他の追随を許さないほど圧倒的に勉強ができる」「試験で無双する」といった、少し強くて格好いいイメージが含まれています。
ちなみに「学霸:xué bà」の対義語は「学渣:xué zhā」です。
舌
「舌:shé」は「舌」という意味から「言葉」という意味に派生しました。
「学」+「舌」→「学舌:xué shé」(言葉を真似る)
「学」は「真似る」という意味もありましたね。
「舌」(言葉)をオウムのように真似することから、人の話を受け売りするという意味でも使われます。
他に、口が軽くおしゃべりであることも言います。
步
「步:bù」は「歩く」という意味です。
秦で統一された文字(小篆)以降では、上が「止」で下が止まるの反対になっていて、歩く様子を表していました。

「学」+「步」→「学步:xué bù」(歩くのを真似る。)
子供が歩くのを真似しながら覚える様子を表します。
ここから比喩的に、初歩段階であることを示す時にも使います。
考えたことの記録
漢字1個にもたくさんの物語があります。
その物語をつかむべく、ノートに「學」の甲骨文字を書いて、30分間ノートの上で格闘してみました。

「学習」の本当の意味
秦時代に意味が派生したとしても、「学習する」が先にくるだろうか?「真似る」という意味が先に派生したと考える方が自然ではないか?
もしくは現代は「学習する」を知識を詰め込むことと解釈しがちだが、もともとは「学習する」と「真似る」は同義だったのかもしれない。
論語の「學而時習之」も、聖人賢人の教えを何度も「真似る」ことで自分のものにしていくことを強調しただろう。
「学習」が「知識を入れる」ことではない、ということなのかもしれない。そう考えると、現代のボクたちは「学習」の意味をはき違えているのだろう。
四書がこれ一文字に詰まっている!かも
もともと「家を建てる」という意味の字が「学習する」となったのには深い意味があるかもしれない。
教えを真似て人間を完成させるということか?家の形と説明する辞書が多いが、これが人間の肉体だとしたら、後に加わった「子」のような形は、人間にもともと備わっている「明徳」かもしれない。
木材を置く両手はこの「明徳」を明らかにする作業、四書の『大学』の最初の一節
「大學之道,在明明德」を表していると考えられないか?
今日の一歩
「学ぶ」の意味を、家を建てるように自分を完成させると解釈していこうと思います。
知識を入れることが学習ではないと、自分の考えを矯正させて、これからは自分を耕すために読書を積んでいきたいと思いました。
編集後記
今回が、漢字1文字をじっくり思考するという試みの第一回目でした。
1文字だけ眺めて、何か考えが生まれるのかと思っていました。正直乗り気ではなかったのですが、ノートに甲骨文字を見よう見まねで書いてみると、不思議なことにペンが止まりませんでした。
30分はあっという間に経ち、気づいたらノート1ページ分ぎっしり書いていました。
不思議なものです。論語シリーズでは1文をノートでじっくり思考しています。
たった一文でも、本をいくつも速読するより収穫がある気がしていました。
今回は、たった一文字なのですが、不思議なことに、30分で1ページが埋まりました。
(論語では1文を二日で計2時間、それぞれ1ページくらい)
漢字のパワーというもののすごさを思い知りました。
関連学習リソースと参考リンク
- 内部リンク(漢字のたね://)
- 外部リンク(漢典 zdic.net)
- 参考文献(說文解字,王力古漢語字典,中华字典,现代汉语词典,汉字源流字典)
