中国語の普通話は北京の言葉が元だと思いますよね?
実際は、河北省にある滦平县:luán píng xiànという所なのです。
今でも「普通话之乡」として知られています。

この地が選ばれたのも歴史的背景があります。
以下くわしく見ていきましょう。
標準中国語の原点を探る――滦平の発音から始まった普通话
河北省にある滦平县:luán píng xiànでは、お年寄りもみな標準的な普通話を話すとして中国で有名です。
1956年に普通話の普及が始まるのですが、その前から標準的な発音の収集が行われていました。
1953年に役員たちは、この滦平县で地元民の発音を録音します。

住民の中から、小学生を含む学生7人が選ばれました。
唐詩を朗読して、それを録音したそうです。
以下のドキュメンタリーでも当時録音に参加した人も登場します。
どうして北京じゃないの?
北京方言は、胡同音:hú tòng yīnとも呼ばれ、
儿化が強く、省略があったり、尾音の強調もあります。
明天→明儿
昨天→昨儿
八十八→八儿八
儿音や軽声は清朝時代の満族(ツングース)の言語の影響だと言われています。
北京方言は、標準語としてはクセが強すぎるわけですね。
そこで河北省の村、滦平县が注目されたのです。
どうして滦平县?方言はなかったの?
明の初期、モンゴル人たちに対抗するためこの地は放棄されました。
原住民たちは強制的に北京に移住させられます。


距離的にも北京に近いですね。
それから200年くらいこの地域は無人の地と化し、
もともとあった方言は消滅します。
清朝に入り、この荒廃地も耕されて田んぼができ、貴族が住まう地区ができました。
滦平县の発音の特徴は、北京方言と比べて儿化音が少ないことが挙げられます。
おそらく貴族が中心として住んでいたこともあり、話し方が統一的だったのかもしれません。
まとめ
滦平县が普通话のモデルになったのは偶然ではありません。
北京方言のような強い儿化音を持たず、クセのない標準的な発音だったからです。
明代以降の歴史の中で方言が一度途絶え、清代に再定住した人々によって発音が自然に均質化したという、その「無方言性」こそが、標準語の基礎になりました。
標準語は単なる発音の統一ではなく、歴史的な選択の結果でもあるのです。
実際に滦平县で地元民にインタビューしている動画も見つけたので貼っておきます。
