【論語の教え8】「行有餘力 則以學文」：人間力を高める道徳実践の七段階と学びの正しい順序

人生を成功させるために、まず何を優先すべきでしょうか？

本記事は、『論語』の教え「弟子入則孝」（弟子たる者は…）を詳細に解説し、
成功の土台となる七つの道徳実践の段階を明らかにします。

孔子が説いた「行有餘力、則以學文」という黄金律を紐解き、
実践（行）と知識（文）の正しい順序を学び、真の人間力を高める方法を探ります。

論語「弟子入則孝」の書き下し文と現代語訳

子曰：「弟子入則孝，出則弟；謹而信，汎愛眾；而親仁，行有餘力，則以學文。」
Zǐ yuē: “Dì zǐ rù zé xiào, chū zé tì; jǐn ér xìn, fàn ài zhòng; ér qīn rén, xíng yǒu yú lì, zé yǐ xué wén.”
（簡体字：子曰：「弟子入则孝，出则弟；谨而信，泛爱众；而亲仁，行有余力，则以学文。」）

書き下し文：
子曰く、「弟子ていし、入いりては則すなわち孝こう、出いでては則ち弟てい、謹つつしみて信あり、汎ひろく衆しゅうを愛して仁に親しみ、行おこないて余力あらば、則ち以もって文を学ぶ。」

意味：
人の子たる者、弟ていたる者は、家庭に入りては孝行を尽くし、外に出ては目上の人に敬意を払って、秩序を乱すことのないように。
言動を慎み、誠実であること。そして広く人々を愛すること。
徳のある人を師としてお手本にし、これらを実行して、さらに余力があれば学問に励むこと。

【原文解説】道徳実践の七段階：「孝・弟・謹・信・愛・仁・文」を紐解く

弟子入則孝，出則弟

“古代汉语词典”によるとここでの「弟子：dì zǐ」は、兄から見ての弟と親から見ての子の意。

「入：rù」：家庭内
「出：chū」：家の外を指します。

両親に善をもって尽くすのが「孝」で、親以外の目上に対するそれを「弟」といいます。
其爲人也孝弟，而好犯上者，鮮矣
で登場した「孝弟」と同じです。

※「弟」は“dì”ではなく“tì”と読みます。
（年長者への従順・敬愛を指す動詞で「悌tì」と同じ）

人の子たる者、弟ていたる者は、家庭に入りては孝行を尽くし、外に出ては目上の人に敬意を払って、秩序を乱すことのないように。

謹而信，汎愛眾

「謹：jǐn」：口数少なく、言葉に慎重になること。
「信：xìn」：言うことが誠実で嘘偽りがなく、信用を守ること

曾子が毎日反省しているという
與朋友交而不信乎？でも登場しましたね。

「汎：fàn」：広い範囲
「眾：zhòng」：人々

言動を慎み、誠実であること、そして広く人々を愛すること。

仁という心の状態が外に向かって発動するのが「愛」です。

而親仁，行有餘力，則以學文

「親：qīn」：近づく、接触する

「仁：rén」はここでは仁者（徳のある人。人間性が完成された人）を指す。
「行：xíng」孝、弟、謹、信、汎愛眾、親仁を実行すること。

「文：wén」朱熹によるとここでは詩書六芸を指す。

「則：zé」は“就”と同じで「すなわち」というニュアンス

徳のある人を師としてお手本にし、これらを実行して、さらに余力があれば学問に励みなさい。

「行」を具体化する規範：「弟子入則孝」から『弟子規』への深掘り

家の中にいる時、外に出る時、人をもてなす時、物事に対処する時、世の中で立ち振る舞う時、そして学問を修める時、それぞれにおいて持つべき礼儀作法や規範として、

この節は清の時代に『弟子規ていしき』としてまとめられました。

最初に論語の節を三字ずつに整理した総括があり、
それぞれの具体例が挙げられている形式です。

弟子規　聖人訓　首孝弟　次謹信
汎愛眾　而親仁　有餘力　則學文
Dì zǐ guī, shèng rén xùn, shǒu xiào tì, cì jǐn xìn,
fàn ài zhòng, ér qīn rén, yǒu yú lì, zé xué wén.

清の朝廷から重要視され、子供の必読経典とされました。

僕が一番最初に触れた中国古典も『弟子規ていしき』でした。

三字ずつで音読していてもリズムがよく1000回以上読んでいます。

現代でも淨空法師が道徳の基本経典のひとつとして提唱しています。
（儒家の『弟子規』道家の『太上感應篇』仏家の『佛說十善業道經』）
これらもブログと動画でまとめますのでお楽しみに！

蔡禮旭（cài lǐ xù）という台湾元小学校の先生の全40回の『弟子規ていしき』の授業は秀逸です。
僕はここ数年ですでに10回近く見たり聞いたり読んだり（本もある）しています。

自分の心が洗われる感じがあり、オープニングの音楽を聴くだけで心が落ち着きます。

中国語学習者はリスニングの一環としてもおすすめです！