こんにちは!ちゃいなサプリのYukiです。
中国ビジネス情報誌『新周刊』第592期に紹介された記事から紹介します。
中国では“社恐:shè kǒng”という言葉が広まってきています。
これは“社会恐惧症:shè huì kǒng jù zhèng”(Social Phobia)と呼ばれる心理的な障害のことです。
日本語では「社交恐怖」と呼ばれているようです。またの名を社交不安障害(Social Anxiety Disorder, SAD)といいます。
ちなみに、こちらの中国語は社交焦虑障碍:shè jiāo jiāo lǜ zhàng àiです。
実際に若者たちが自分のことを「社恐」と呼ぶときは、自虐的な感じで「コミュ障」程度の意味合いです。
このような直視したくないような問題には病名をつけるのが便利なのです。
たとえばこのようなものがあります。
朝起きられない→起床困難症
コーラが大好き!→デブ快楽水依存症
動画版もあわせてどうぞ〜
村上春樹も「社恐」?
本誌では日本の小説家、村上春樹も人との付き合いを好まないとして紹介されています。
公の場に出ることもほとんどなく、賞をもらうときも代理に頼むことが多いです。
また、村上春樹の思い描く理想のパーティーというのも紹介されています。
「人数は10〜15人で、みんなちいさな声で会話をしていて、名刺交換などもしない。そして、仕事の話もしない。部屋の隅では規則正しく整列した弦楽器奏者がモーツァルトを演奏している。人を怖がらないシャム猫がソファの上で気持ちよさそうにすやすや眠っている…。(中略)シルクのドレスをまとった才色兼備な中年女性が親切にダチョウの飼い方を事細かに教えてくれる。」
村上春樹の小説の中に登場する人物もほとんどが人との交際を好まず、孤独を好み、物静かで寂しい人です。
また村上春樹の著書『職業としての小説家 (新潮文庫)』の中でも正常で寛容な社会は、社交恐怖であれ、風変わりであれ、その人達にも合ういくつかの選択肢があるべきだと言及しています。
村上春樹の小説執筆のヒミツについてはこんな記事もありますので、興味のある方は読んでみてください。
村上春樹の小説の書き方!使っている筆記具から文字のフォントまで紹介!
中国の若者の半分ちかくが「社恐」?
2020年末に中国で実施された18ー35歳の若者へのアンケートによると、
4000人以上の回答のうち
40.2%が「程度の差はあれ自分には『社恐』の傾向がある」と答え、
52.7%が「人との付き合いが得意ではない」と回答しました。
現実での交際がうまくできない人のためのアプリもどんどん登場してきています。
お金を払えば話し相手をマッチングしてくれるアプリやゲームを一緒に付き合ってくれるアプリなど
自分で「社恐」と自称する若者の場合、自分が苦境にいることを他人に見られたくなくて、さらに、誰かの前で強がったりするのも好きじゃないから人との交際を避けるという回避の傾向も強いと分析されています。
「社会性死亡」が46万人
豆瓣:dòu bànと呼ばれるソーシャルメディアでは、“社死:shè sǐ”と呼ばれるグループが作られました。
これは“社会性死亡:shè huì xìng sǐ wáng”の略で、「気まずい場面」「恥ずかしかったできごと」などを自虐して言う言葉です。
その社会性死亡の例としては、
「耳に水が入ったから首を傾けて歩いていたら、心の優しい人が、ボクを障害者だと思ったのか席をゆずってくれた…。」
「大学デビューしたばかりの頃、自分の寮に行ったら初対面のルームメイトに管理人のおばちゃんと間違えられた…。」
「授業中、こっそりイヤホンつけてトークショーを見ていた。すっかり見入ってしまって、終わった後に立ち上がって拍手してしまった…。」
「仲良しの友達の家に行ったら、私とその友達の旦那さんの服がペアルックだった…。」
このグループではそんな出来事を共有する場なのです。約46万人が参加していて、その匿名の中で、「本当の自分」をあらわにするのです。
そして、「社会性死亡」を経験した人たちは自分たちを「死体」と表現します。
「社恐」で恋愛もできないカメラマン
ある26歳のカメラマンはイギリス留学から帰り、現在は上海の有名会社に勤めています。彼女は自分のことを「社恐」ではないかと疑っています。
誰かとデートするとか考えただけで、気が重くなり窒息するかのように息苦しくなります。この数年間、家族や友達は何人も彼女に彼氏候補として紹介してきました。
WeChatで話している分には楽しいのですが、相手が直接会いたいと言ってくると彼女は尻込みしてしまうのです。
「別に仮病ってわけじゃないんだけど、本当に動悸がして、胃がちくちく痛むような症状が出るときがあるの。」と彼女は言います。
会うのはムリというメッセージで、デートを断った後は、こういった症状は和らいでいくのです。
SNSの中では自然に振る舞えるから、ずっとネットの中に入っていたいと思うのは彼女だけではないのです。
今では中国の若者1人あたり平均9個以上のアカウントを持っているといいます。
>>中国の若者トレンドはスマホの中!平均○個のSNSアカウントを持っている!
彼女が自分が恋愛はできないと思う理由
彼女が自分が恋愛できないと自覚する理由は2つあります。
1つは、人付き合いが苦手で、面と向かって話すとなると場がしらけてしまったり、自分が不自然になってしまうからです。そして、デートの相手が自分に対して良くない印象を持つということも受け入れたくないというのが理由です。
2つ目は、恋愛はかなり複雑だということです。始めて知り合ってから親密になるまでは難度も高いし、すごく長い道のりのような気がしてしまいます。そして、二人の関係がぎくしゃくしてしまったときにお互いが冷静に解決できないのではないかと思ってしまうのです。
「だから一般的にデートの誘いはすべて断るの。相手がまた積極的にさそってきたら考えるつもりなんだけど、一度私から断ったら、もうあまり連絡してきたりしないわ。」
アラサー独身が中国で急増中!その数なんと3億人(日本の人口の2倍以上)理由は〇〇!
恥ずかしがり屋と「社恐」
自分のことを「社恐」だと思っていても、ただ内向的なだけで、性格の問題である場合もあるのです。
(Single, Shy, and Looking for Love: A Dating Guide for the Shy and Socially Anxious (English Edition))という内気と社恐のための恋のガイド(日本語版は出ていません)の中にはこう書かれています。
「特徴も似ていて、恥ずかしがり屋には社恐である場合も多いですが、恥ずかしがり屋が必ずしも社恐ではないのです。実際、恥ずかしがり屋の人の82%は心理的な社交不安障害ではないのです。」
最初は内向的であまり話さなくて、お互いが理解していき、徐々に心を開いていくという人を中国語では”慢热:màn rè”といいます。
直訳すると「ゆっくり熱くなる」ということです。ぼくの妻がちょうどこんな感じです。
5-15-50-150-500の法則
金澤哲(かなざわ さとし)という心理学者が2018年にイギリスで15,000人の18−28歳の若者を対象に分析した結果が紹介されています。
生活環境や健康状態、IQや人との交際状況などを詳細に分析した結果、IQが平均値より低い人たちは、人との交際で楽しいと感じていて、その回数が多ければ多いほど喜びを覚えるとしています。
反対に、IQが平均値より高い人は人口が密集する町に住むことを好みながら、社交は好まない傾向にあるようです。
人の交際が少なければ少ないほど喜びを感じるのです。
さらに、社交の場では気分もよくなくなり、楽しいとも感じず、社交が多い状況では生活の満足度もがると報告されています。
しかし、彼らは近寄りがたいのではなく、その頭の良さと会話力を使って楽しませてくれて、付き合いやすい人たちなのです。
単純に社交が嫌いというわけではなく、無駄な社交を減らす、社交の断捨離ができているだけのことだといいます。
『ウェブはグループで進化する』という書籍の中では《5-15-50-150-500の法則》という人間関係のパターンの平均値が提唱されている。
5というのは、精神的支えになってくれたり、困ったときに助けを求めることのできる相手の平均的な人数。家族とか親友とか自分にとって最も大事な人たちの数。
https://techwave.jp/archives/51741866.html
次の15というのは、社会心理学がシンパシーグループと呼ぶ人たち。家族や親友ではないが、その人が亡くなれば大きな悲しみを経験するような人の数。
次の50という数字は、比較的頻繁にコミュニケーションを取る人の数。
150というのは、いわゆるダンバー数。人間の頭脳の大きさで決まる数字で、一人ひとりの名前を覚えていて、だれがだれだかをはっきり認識できる人の数。
500というのは、会ったことはあるけど、それほど親しくない人の数。人生を通じて500人以上の人と出会うわけだけど、実際に名前を覚えていられるのは500人程度だという。
また『ソーシャルインテリジェンス:新しい成功の科学』”Social Intelligence: The New Science of Success“ という書籍(日本語版はないようです。)では、
EQとはちがった社交の能力として「ソーシャルインテリジェンス」というものを提唱しています。
これが高い人は主に5つの特徴があるとしています。その5つはSPACEと呼ばれ、
「空気を読む力」(Situational Awareness)
「身体だけでなく気持ちもそこに存在すること」(Presence)
「ブレない自分らしさ」(Authenticity)
「はっきりわかりやすい表現や態度」(Clarity)
「共感」(Empathy)
これらの能力を鍛えるには特化したトレーニングが必要です。
日本には専門的にコミュニケーション能力を鍛えてくれるスクールもありますので、日本在住でコミュニケーション向上に興味がある人はぜひチェックしてみるといいと思います。
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中国のトレンドを作る「若者たち」
中国を理解するためには中国の若者の理解が必須になります。
匿名の中で存在することに安心感を覚えることも多く、自分が役になりきって遊ぶスタイルのゲームである「マーダーミステリー」も流行しています。
中国で大人気!市場規模2500億円パーティーゲーム「マーダーミステリー」とは?
就職するのが嫌だと思う人が多く横たわり主義や寝そべり主義と呼ばれる若者も急上昇中でしたね。
中国の若者―寝そべり主義?躺平主義?
就職しない代わりに猫を繁殖させて販売するという「猫舎」を経営する若者も多くなっています。
猫舎って何?中国で就職せず「ペットブリーダー」になる若者急増中!(具体例あり)
人間関係に疲弊して髪が薄くなってしまった若者の悩みも紹介しましたね。
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ぜひこれらの記事もあわせてご覧ください。知識の点と点がつながってニュースや本の理解が格段に高まります!
★中国語勉強中の方へ
「ちゃいなサプリ」のYouTubeでも中国語文法を1から解説しています。
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以上です。ありがとうございました。
★本サイトで使用しているVPN
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(中国では海外のサイトにアクセスするときにVPNというものが必要です。本記事も中国から執筆しています。)
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